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転職エージェントに登録しようとして、フォームの途中で手が止まることがあります。
「現在の年収」
会社員なら、源泉徴収票の「支払金額」を見れば判断しやすい項目です。しかし個人事業主やフリーランスの場合、年収に見える数字がいくつもあります。
売上を書くべきなのか。経費を引いた所得を書くべきなのか。青色申告特別控除や社会保険料控除を引いた後の金額なのか。
さらに、所得が低く見える年は「この数字を書いたら、転職エージェントに低く評価されるのでは」と不安になる方もいるはずです。
この記事では、個人事業主が転職エージェントへ登録するときの「現在の年収」欄の考え方と、売上規模・実績を誤解なく伝える補足方法を解説します。
編集チームでは、個人事業主の年収欄は「一番大きい数字を書く」よりも、あとで説明がつく数字を選ぶことが大切だと考えています。
この記事では、売上・事業所得・課税所得・手取りの違いを整理しながら、登録フォーム、備考欄、初回面談でどう伝えるかを具体例つきで紹介します。
転職エージェントへの登録フォームは、最初はスムーズに進みます。
氏名、住所、連絡先、希望職種、希望勤務地。ここまでは迷わず入力できても、「現在の年収」の欄で急に判断が難しくなります。
個人事業主の場合、会社員の給与年収と違い、売上、所得、課税所得、手取りが別々に存在します。
しかも、転職エージェントの登録フォームは会社員向けの作りになっていることも多く、「個人事業主の場合はここを見てください」と細かく案内されていないケースがあります。
そのため、次のような迷いが出やすくなります。
ここで大切なのは、数字を大きく見せることではありません。登録後の面談や求人紹介で説明しやすい、筋の通った数字にしておくことです。
年収欄で迷うと、つい一番見栄えのよい数字を書きたくなります。あとで面談担当者に聞かれても説明できる数字を選ぶのが近道です。
混乱の原因は、「年収」という言葉が個人事業主にとって一つの数字ではないことです。
まずは、よく出てくる4つの数字を分けて考えましょう。
| 区分 | 意味 | 年収欄への向き不向き | 補足 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 請求・入金された年間の総額 | そのまま書くと高く見えやすい | 経費を含むため実態説明が必要 |
| 事業所得 | 売上から必要経費を引いた金額 | 基準にしやすい | 現在の年収欄の目安にしやすい |
| 課税所得 | 所得から各種控除を引いた金額 | 年収欄には向きにくい | 控除状況で大きく変わる |
| 手取り | 税金や保険料などを支払った後に残る金額 | 年収欄には向きにくい | 家計状況も混ざりやすい |
売上は、クライアントへ請求した金額や入金された金額の合計です。
たとえば年間で800万円の請求があれば、売上は800万円です。ただし、この中には外注費、車両費、ソフト代、広告費、家賃按分など、仕事を続けるための経費が含まれます。
会社員の年収と並べると、売上は実態より大きく見えやすい点に注意が必要です。
売上だけを見ると、事業の規模は伝わります。ただ、経費が大きい業種では「年収」として受け取られると誤解が出やすくなります。
売上は事業規模を伝える材料になりますが、そのまま会社員の年収とは比べにくい数字です。経費の大きさも合わせて考えましょう。
事業所得は、売上から必要経費を差し引いた金額です。
個人事業主の働き方を会社員の年収に近い形で伝えるなら、この事業所得を基準にするのが自然です。
転職エージェントの登録フォームに「現在の年収」とだけ書かれている場合は、原則として事業所得を入力し、備考欄や初回面談で売上規模を補足すると説明しやすくなります。
課税所得は、事業所得から各種控除を引いた後の金額です。
青色申告特別控除、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などが反映されるため、働き方や事業規模だけでなく、家族構成や控除の状況にも左右されます。
そのため、転職エージェントの年収欄に課税所得を書くと、実際の事業規模や稼ぐ力より低く見える可能性があります。
課税所得は控除の状況でも変わるため、仕事の成果だけを表す数字ではありません。年収欄ではなく、税務上の金額として分けて考えましょう。
手取りは、税金、住民税、国民健康保険料、国民年金などを支払った後に残るお金です。
生活感としては一番リアルですが、転職エージェントの年収欄に書く数字としては向きません。
手取りは、住んでいる自治体、保険料、扶養、家計支出などにも影響されるため、採用側が比較しにくい数字になります。
「手元に残った金額」が一番実感に近いので迷いやすいところです。ただ、登録フォームでは比較しにくい数字になるため、手取りは面談時の生活設計の話として分けておくと安心です。
転職エージェントの登録フォームにある「現在の年収」欄には、原則として事業所得を記入するのが基本です。
理由は、売上よりも実態に近く、課税所得や手取りよりも仕事の成果を説明しやすいからです。
会社員の年収は、給与として支払われた金額を基準にすることが多いです。
一方、個人事業主の売上には、仕事をするための経費が含まれています。
たとえば、売上1,000万円でも経費が700万円かかっていれば、事業所得は300万円です。この場合、年収欄に1,000万円と書くと、実際の手残りや会社員年収との比較からずれが出やすくなります。
売上が大きくても、外注費や車両費などの経費が多ければ実態は変わります。金額だけでなく、どんな事業構造だったかも説明できるようにしましょう。
課税所得や手取りは、控除や税金、社会保険料の影響を強く受けます。
節税をしている人ほど課税所得は低く見えることがありますし、手取りは生活条件によっても変わります。
転職エージェントに職務経験や市場価値を見てもらう場面では、まず事業所得を基準にし、必要に応じて売上や実績を補足しましょう。
事業所得が低い年でも、仕事の価値が低いとは限りません。設備投資、外注費、広告費、車両費などで所得が圧縮されている場合は、数字の背景まで説明できる準備が必要です。
節税や家族構成によって変わる数字は、担当者が経験を比較しにくくなります。まず仕事から生じた所得を基準にすると整理しやすくなります。
個人事業主から会社員へ戻る全体像を先に整理したい方は「個人事業主から正社員への転職は不利?『やめとけ』と言われる理由と成功へのロードマップ」も参考になります。

年収欄に事業所得を書く場合、手元の確定申告書類から数字を確認します。
ただし、申告書の様式や会計ソフトの表示は変わることがあるため、最終的には自分が提出した申告書控えや会計ソフトの年度レポートで確認してください。
青色申告の場合は、青色申告決算書の「所得金額」にあたる欄を確認します。
売上欄ではなく、必要経費などを反映した後の所得金額を見ます。
会計ソフトを使っている場合は、確定申告書のPDF控えと、損益計算書の年間集計を並べて確認するとズレに気づきやすくなります。
青色申告特別控除の前後など、どの数字を見ているか迷う場合があります。欄名だけで決めず、計算の流れまで確認しておきましょう。
白色申告の場合は、収支内訳書の所得金額にあたる欄を確認します。
こちらも売上ではなく、経費を差し引いた後の数字を見るのが基本です。
白色申告でも、収入金額と所得金額は別です。入金総額ではなく、必要経費を反映した後の数字を確認してから入力しましょう。
確定申告書では、収入金額と所得金額が別の欄で表示されます。
年収欄の基準にしたいのは、売上にあたる収入金額ではなく、事業所得にあたる所得金額です。
書類名や欄名だけで探すと、似た数字が並んでいて迷いやすいです。迷ったら売上ではなく所得金額を見ると覚えておくと、入力ミスを減らしやすくなります。
個人事業主が一番不安になりやすいのは、所得が低く見えるケースです。
売上はそれなりにあるのに、経費や控除の影響で所得金額が低くなることがあります。
このとき、年収欄に事業所得だけを書くと、転職エージェントの担当者に「思ったより経験や実績が少ないのでは」と受け取られないか不安になります。
そこで大切なのが、年収欄だけで勝負しないことです。
登録フォームに備考欄、自己PR欄、その他メッセージ欄がある場合は、事業所得と売上規模の関係を簡潔に補足します。
備考欄の記入例:年収欄には確定申告上の事業所得を記入しています。年間売上は〇〇万円で、経費計上後の所得は〇〇万円です。担当業務・実績・希望年収の根拠は初回面談で補足します。
この一文があるだけで、担当者は「年収欄の数字だけでは判断できない」と分かります。
備考欄は長い事情説明を書く場所ではありません。入力した数字の基準と、売上規模が分かる一文に絞ると伝わりやすくなります。
登録後の初回面談では、フォームに入力した数字の背景を説明しましょう。
特に伝えたいのは、次の4つです。
初回面談での伝え方:登録フォームの年収欄には事業所得を入力しました。売上ベースでは年間〇〇万円ほどで、経費計上後の所得が〇〇万円です。実際に担当していた業務範囲や成果は、希望職種に合わせて補足できます。
面談で数字の背景を聞かれたときに詰まると、担当者も求人を当てにくくなります。事前に売上、所得、希望年収の3点を同じ紙に並べておくのが確実です。
数字だけで伝わりにくい場合は、実績資料を用意します。
たとえば、次のような内容をA4一枚程度にまとめると、初回面談で説明しやすくなります。
守秘義務がある場合は、会社名や具体的な数値を伏せて、業種、規模、担当範囲で説明しましょう。
実績資料は立派なデザインにしなくても大丈夫です。担当業務、成果、使えるスキルが一目で分かるだけで、面談の会話が進みやすくなります。
個人事業主経験を応募書類でどう見せるか迷う方は「個人事業主(フリーランス)の履歴書・職務経歴書の書き方!職歴の書き方見本と自己PR例文」も確認しておくと整理しやすいです。

年収欄は、毎年きれいに黒字が出ている人だけが迷う項目ではありません。
赤字の年、廃業した年、開業初年度、源泉徴収がある業種など、数字の見え方が複雑になるケースもあります。
事業所得が赤字の年は、無理に黒字のように見せないことが大切です。
フォーム上でマイナス入力ができない場合は、0円と入力し、備考欄で売上規模や赤字の理由を補足する方法があります。
赤字の理由が設備投資や開業初期費用などの場合でも、公式な評価が一律に決まるわけではありません。登録フォームの仕様や面談担当者の案内に合わせて、補足説明を準備しておきましょう。
赤字を隠すために前年の数字を無断で使うのは避けましょう。フォームの仕様を確認し、どの年度の数字か分かる状態にすることが大切です。
年の途中で廃業した場合や、売上が途中までしかない場合は、前年の事業所得を参考値として使う方が説明しやすいことがあります。
その場合は、備考欄に「〇年〇月に廃業」「直近年度の事業所得を参考値として記入」など、前提を添えておきましょう。
年の途中で廃業した場合は、年間数字として単純比較しにくくなります。事業を行っていた期間も合わせて伝えると誤解を防げます。
ライター、デザイナー、講師、士業などでは、報酬から源泉徴収されている場合があります。
源泉徴収の有無にかかわらず、転職エージェントの年収欄では、まず事業所得を基準にし、源泉徴収や支払調書の扱いは面談時に補足すると整理しやすいです。
特殊な年ほど、数字だけを入力すると事情が抜け落ちます。備考欄に「この数字は何年度のどの基準か」を一文で添えておきましょう。
年収欄の入力基準が分かったら、いよいよ登録です。個人事業主の経歴を正しく評価してくれるおすすめのエージェントは「個人事業主・フリーランスに強い転職エージェントの選び方!元当事者がおすすめする支援サービス」にまとめています。登録前の最終比較にお役立てください。

登録フォームを送信する前に、次の点を確認しておきましょう。
チェック項目が多く見えても、やることは「数字の基準を決める」「補足を書く」「面談で話せるようにする」の3つです。送信前に10分だけ見直しておくと安心です。
転職時に必要な書類や手続きをまとめて確認したい方は「個人事業主が転職する時の必要書類と手続きガイド|源泉徴収票・雇用保険証がない場合の対応や年末調整・確定申告のやり方」も参考になります。

転職エージェント登録時の「現在の年収」欄は、個人事業主にとって迷いやすい項目です。
売上を書くと実態より高く見えやすく、課税所得や手取りを書くと仕事の成果が低く見えやすくなります。
そのため、基本は事業所得を入力し、備考欄や初回面談で売上規模、経費の背景、実績、希望年収の根拠を補足しましょう。
整理すると、次の流れです。
数字を大きく見せるより、説明できる状態にしておく方が、転職エージェントも求人を紹介しやすくなります。
年収欄で大事なのは、見栄えのよさではなく登録後に説明がつく数字にすることです。事業所得を基準にして、売上規模と実績は備考欄と面談で補いましょう。
売上を補足情報として伝えることはできます。ただし、年収欄に売上だけを書くと、経費を含んだ数字が会社員の年収と同じように見られる可能性があります。基本は事業所得を入力し、売上は備考欄や面談で補足するのが無難です。
数字だけで判断されるとは限りません。ただ、事業所得だけでは実績や売上規模が伝わりにくいことがあります。備考欄や初回面談で、売上規模、担当業務、実績、希望年収の根拠を補足しましょう。
フォームでマイナス入力ができない場合は、0円と入力し、備考欄で売上規模や赤字の理由を補足する方法があります。前年の数字を参考にする場合も、年度と基準を明記してください。
基本的には同じ基準でそろえるのが安心です。エージェントごとに違う数字を書くと、後から説明が難しくなることがあります。事業所得を基準にして、売上規模は補足として統一しておきましょう。
希望年収は、現在の事業所得と完全に一致させる必要はありません。ただし、希望額の根拠は必要です。担当業務、スキル、実績、希望職種の相場感をもとに、初回面談で説明できるようにしておきましょう。




年収欄だけで全部を伝えようとすると、数字が一人歩きします。まずは年収欄は事業所得、補足で売上規模という分担にしておくと、登録後の説明がかなり楽になります。