これから起業する人へ|ビジネスモデルの基本的な考え方とゼロから設計する方法

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起業を考えるとき、多くの人はまず「何を売るか」や「どんなサービスを作るか」を考えます。しかし、成功する事業の本質は「アイデア」ではなく、それをどうお金に変えるか(=ビジネスモデル)にあります。

たとえば同じコーヒーでも、スターバックスは「空間と体験」で稼ぎ、コンビニは「スピードと手軽さ」で稼ぎます。つまり「何を売るか」よりも「どうやって収益を生み出すか」を設計する力こそが、起業家の腕の見せどころです。

この記事では、これから起業を考えている人が知っておくべき「ビジネスモデルの基本構造」と、「ゼロからモデルを設計する具体的なステップ」をわかりやすく解説します。

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作成者
眞中 秀和
監修者

目次

ビジネスモデルとは何か? まずは定義を理解する

1. ビジネスモデルの定義

ビジネスモデルとは、「価値を生み出し、その価値を顧客に届け、対価として利益を得るまでの仕組み」のことです。もう少し簡単に言えば、「どうやって儲けるのか」を言語化した設計図です。

この中には、以下のような構成要素が含まれます。

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要素内容
顧客セグメントどんな人・企業をターゲットにするか
価値提案どんな価値を提供するのか
チャネルどのように顧客に届けるのか
顧客関係どんな関係性を築くのか
収益の流れどのようにお金を得るのか
主要資源何を使って事業を動かすのか
主要活動何をすることが価値提供につながるのか
パートナーどんな外部協力者が必要か
コスト構造どのような費用がかかるのか

これは「ビジネスモデル・キャンバス」と呼ばれる世界的なフレームワークで、起業の設計段階では非常に役立ちます。

ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは 書き方・事例・ポイントを紹介 | ツギノジダイ

2. ビジネスモデル=「収益の方程式」

ビジネスモデルを数式で表すと次のようになります。

利益=(顧客数 × 客単価)−コスト

これだけ見ると単純ですが、実際の事業はこの方程式をいかに持続的に成立させるかの試行錯誤です。つまり、「誰に」「どんな価値を」「どんな価格で」「どんなコスト構造で」提供するかを最適化することが、起業家の仕事です。

3. 似ているようで違う「ビジネスアイデア」と「ビジネスモデル」

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項目ビジネスアイデアビジネスモデル
意味何をやるかどうやって儲けるか
無人カフェをやりたいサブスク制で定額コーヒーを提供する
主体発想・着想設計・仕組み
成功の鍵斬新さ再現性と継続性

つまり、アイデアは“種”であり、ビジネスモデルは“畑”です。どんなに良い種を持っていても、育てる仕組みがなければ芽は出ません。

成功するビジネスモデルの3原則

ビジネスモデルは単に収益を上げる仕組みではなく、「価値の交換を円滑にする仕組み」でもあります。そのためには、以下の3つの原則を意識することが重要です。

原則①:顧客の“課題”から出発する

失敗する起業の多くは、「自分のやりたいこと」からスタートしています。しかし本来、ビジネスは顧客の課題解決のために存在するものです。

  • ✕「こんなサービスがあったら面白い」
  • ○「この課題を解決するために必要なサービスは何か」

たとえば「個人の動画編集を代行する」ビジネスの場合、顧客の本当の課題は「編集が面倒」ではなく、「プロっぽい動画を自分で作れないこと」かもしれません。その視点をもとにサービスを再設計すると、“自動テンプレート+AI補助”という全く新しい価値提案も見えてきます。

原則②:差別化できる「提供価値」を明確にする

競合が多い市場では、「何を提供するか」より「どう違うか」が勝負を分けます。差別化のポイントは大きく3種類あります。

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差別化軸メリット
価格差別化業界最安値、月額制など手軽さ・導入障壁の低下
体験差別化UX・デザイン・ブランドファン化・リピート率向上
機能差別化特許技術、独自ツール技術優位・真似されにくい

スタートアップ初期は、価格競争に巻き込まれるよりも、体験や専門性での差別化を狙うほうが得策です。

原則③:再現性のある収益構造を作る

どんなに良いサービスでも、売上が一時的では事業は続きません。持続的なキャッシュフローを作るには、再現性のある仕組みが必要です。

  • サブスクリプション(月額制)
  • 定期契約(顧問料・サポート料)
  • 成果報酬+固定報酬のハイブリッド
  • 自動販売・リピート率を高める導線設計

再現性とは、「仕組み化」できるかどうかです。属人的な営業に依存するモデルは限界があります。プロセスを自動化・標準化する仕組みを早い段階で整えましょう。

ゼロからビジネスモデルを設計する5ステップ

ここからは、あなたがこれから起業する際に「ゼロからビジネスモデルを作る手順」を具体的に紹介します。単なる理論ではなく、実践ベースで考えられるように整理しました。

ステップ1:顧客を明確に定義する(ターゲティング)

ビジネスの出発点は「誰のための価値か」を決めることです。ターゲットを明確にしないと、価値提案も収益モデルもぼやけます。

方法:

  • ペルソナを作る(年齢・職業・価値観・悩みなど)
  • その人の「理想の状態」と「現実のギャップ」を言語化
  • 既存市場を観察し、競合が見逃している層を探す

ターゲット:「30代のフリーランスデザイナー」
悩み:「営業が苦手で案件が安定しない」
→ 解決策:「オンラインポートフォリオ構築+営業代行支援サービス」

このように、1人の顧客像を具体的に描くことが、すべての出発点です。

ステップ2:価値提案をつくる(Value Proposition)

顧客の課題が見えたら、それを解決するための「価値」を設計します。価値とは、単なる商品や機能ではなく、「顧客が得る変化」です。

顧客が“支払ってでも得たい変化”が、あなたの価値提案です。

例:

  • ダイエット商品 → 「痩せる」ではなく「自信を取り戻す」
  • 時間管理アプリ → 「時間を測る」ではなく「1日をコントロールできる安心感」

価値提案を明確にすることで、価格設定や販売方法にも一貫性が生まれます。に歩んでいきましょう。

ステップ3:収益の仕組みを設計する(Revenue Model)

どんなに良いサービスでも、「どうやってお金を得るのか」が曖昧だと事業は続きません。起業初期の段階で、収益の流れ(Revenue Stream)を明確に設計しておく必要があります。

代表的な収益モデルは以下の通りです。

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モデル名仕組み代表例
単発販売型商品・サービスを一度きり販売小売業・ECサイト
サブスクリプション型月額・年額制の定期課金Netflix、SaaS、ジム
手数料型取引や成果に応じて手数料を得るフリマアプリ、マッチングサイト
広告モデル広告掲載による収入YouTube、ブログ、アプリ
アフィリエイト型他社商品を紹介して成果報酬を得るブログ、SNSインフルエンサー
フリーミアム型無料+有料機能の併用Canva、Spotify、Notion

ポイント:

収益モデルは1つに絞る必要はありません。たとえば「月額制+成果報酬」「販売+サポート契約」など、複合型にすることで安定性が増します。

ステップ4:コスト構造と利益設計を行う

次に、どんな費用が発生し、どのくらいの利益が残るかを可視化します。ここが甘いと、「売上が上がっても赤字」という典型的な失敗に陥ります。

主なコスト項目

  • 固定費:家賃、サーバー費、ライセンス、通信費など
  • 変動費:仕入れ、広告費、外注費、交通費など
  • 初期投資:開発費、デザイン費、登記費用など

損益分岐点をシミュレーションして、「最低限の売上がいくら必要か」を明確にしておきましょう。

例)月30万円の固定費 → 粗利30%なら、売上100万円でトントン。

Excelやクラウド会計ソフトを使って、数字で判断する習慣を早めに持つことが大切です。

ステップ5:検証 → 改善を繰り返す(MVP思考)

最初から完璧なビジネスモデルを作ることは不可能です。大切なのは「最小限の形で試して、フィードバックから学ぶ」ことです。これをMVP(Minimum Viable Product)と呼びます。

MVP検証の流れ:

  1. 仮説を立てる(例:「この課題は有料でも解決したいはず」)
  2. 簡易版サービスを作る(例:Googleフォーム+LINE公式で試す)
  3. 顧客に使ってもらう
  4. 反応を数値で記録(登録率・継続率・離脱理由など)
  5. 改善しながら再リリース

成功するスタートアップは、“小さく始めて速く学ぶ”ことに長けています。時間をかけすぎず、まずは小規模でも「実際にお金が動くか」を確かめることが成長の近道です。

Minimum Viable Product(MVP)とは?手順や注意点、事例を詳しく解説 | ツギノジダイ

ビジネスモデルを磨き続けるための視点

1. 顧客の変化に合わせてモデルをアップデートする

市場や顧客の価値観は常に変化します。固定観念に縛られず、「時代とともにモデルを変える柔軟性」が必要です。

例:

  • 音楽業界 → CD販売 → ダウンロード → ストリーミング
  • 教育業界 → 対面授業 → オンライン講座 → AIパーソナル学習

「一度作ったモデルを守る」のではなく、「顧客の行動変化を先読みして変える」発想が、継続的な成長を支えます。

2. スケールできる仕組みを意識する

個人の努力に依存するモデルでは、売上に上限が生まれます。起業初期は自分が現場を支えても、将来的には「自分がいなくても回る仕組み」を意識しましょう。

  • 作業をツール化・自動化(例:ChatGPT、Zapier、Notion AIなど)
  • 外注・委託による分業化
  • コンテンツや仕組みをストック化(教材・テンプレート・動画など)

スケーラブルな構造を作ることで、あなたの時間=売上という関係から脱却できます。

3. パートナー・コミュニティを活用する

現代のビジネスは、「競争」よりも「協働」の時代です。1人で全てを完結させようとせず、信頼できるパートナーと連携することで事業は飛躍的に伸びます。

  • 同業とのコラボで新市場を開拓
  • 外部専門家との提携で品質向上
  • オンラインコミュニティで人脈拡大・相互支援

特に個人起業家にとって、情報共有と刺激の場を持つことは継続のエネルギーになります。

失敗しない起業のための実践ポイント

1. 情熱だけでなく「数字」で判断する

起業家は理想や想いを持つことが大切ですが、感情だけでは経営できません。ビジネスは“情熱とロジックのバランス”が命です。

  • 目標を数字で置き換える(例:売上、CVR、顧客単価)
  • 感覚ではなくデータで判断する(Google Analytics・会計データなど)
  • 客観的なフィードバックを得る(メンターや顧問の存在)

感情はアクセル、数字はハンドル。どちらか一方では前に進めません。

2. 小さく始めて大きく育てる

最初から大きな投資をして失敗する人が多いですが、実際にうまくいくのは“小さく試して早く改善する人”です。

  • テストマーケティングで反応を確認
  • SNS発信でニーズを探る
  • 無料体験やプレリリースで初期顧客を集める

「完璧」より「スピード」。リリースしてから直す、くらいの気持ちで構いません。

3. 「やらないこと」を決める勇気

起業家はやることが無限にあります。だからこそ、“やらないこと”を明確に決めることが成長のカギになります。

  • 優先順位を決める(緊急ではなく重要なことを優先)
  • 自分の強みに集中する
  • 合わない顧客・業務は思い切って断る

時間とエネルギーは有限です。限られた資源を最大限に活かすには、捨てる勇気=戦略が必要です。

まとめ|ビジネスモデルは「自分の哲学を形にする設計図」

起業は“自由”であると同時に、“自己責任”でもあります。その自由を最大限に活かすために、ビジネスモデルはあなた自身の哲学と仕組みを結ぶ「設計図」です。

  1. 顧客の課題を出発点にする
  2. 独自の価値提案を明確にする
  3. 再現性ある収益構造を作る
  4. 検証しながら柔軟に進化させる
  5. スケールできる仕組みを意識する

起業とは、「社会の中で自分の価値を証明するプロセス」。その第一歩を支えるのが、しっかりとしたビジネスモデルの設計です。

今日から、あなたの理想を“仕組み”に変える旅を始めましょう。


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