個人事業主は社会保険に加入できる?会社員との違いや種類、手続きを解説

会社員から個人事業主になると、働き方の自由度が大きく広がる一方で、税金や社会保険といった制度面での仕組みが大きく変わります。
会社員時代は、勤務先の会社が社会保険の手続きを代行し、保険料の半分を負担してくれていました。そのため、多くの方は「給与から天引きされている」という感覚しか持っていなかったかもしれません。
しかし、個人事業主になると、自分で必要な手続きを行い、全額を負担しなければならなくなります。これにより、毎月の出費や生活設計に直接影響が出るため、準備を怠ると「思った以上に保険料が高かった」「どの保険に入ればいいのか分からない」といった悩みにつながりやすいのです。
特に社会保険については、
- 「会社員のときと同じ保険には入れるの?」
- 「国民健康保険と国保組合って何が違うの?」
- 「国民年金だけだと老後が不安…」
といった疑問を抱える方が非常に多いのが現実です。
そこで本記事では、個人事業主が加入すべき社会保険の種類、会社員との仕組みの違い、加入手続きの流れや注意点について、できる限り分かりやすく解説していきます。これから独立を考えている方、すでに開業したばかりで不安を抱えている方にとって、必ず役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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個人事業主は社会保険に加入できない?

まず押さえておきたいのは、個人事業主本人は、会社員時代に加入していた「会社の社会保険(健康保険+厚生年金)」には原則として加入できないという点です。
会社員のときは、会社が半分の保険料を負担し、事務手続きも代行してくれていました。しかし独立すると、その仕組みから外れるため、同じ制度を利用することはできません。
具体的には以下の2つが大きな違いです。
① 労働保険(雇用保険・労災保険)には加入できない
労働保険は、本来「従業員を守るため」の制度です。事業主自身は労働者ではないため、雇用保険にも労災保険にも、原則として加入できません。
ただし例外として、労災保険については「特別加入制度」が設けられています。これは、危険の伴う業務に従事する個人事業主や一人親方などが、自らの身を守るために加入できる仕組みです。運送業や建設業などリスクの高い業種では、この特別加入を検討するケースも少なくありません。
② 厚生年金には加入できない
厚生年金は、法人事業所や「常時5人以上の従業員」を雇用している個人事業所に適用される制度です。したがって、従業員を雇っていない個人事業主本人や、数人規模で経営しているケースでは対象外となり、加入することはできません。
そのため、個人事業主本人は「国民年金」に加入するのが基本となります。厚生年金と比べると将来の年金額は少なくなるため、「付加年金」や「小規模企業共済」などを組み合わせ、老後の備えを強化することが一般的です。
厚生年金とは?保険料の計算方法や受給額の目安をわかりやすく解説 | 三菱UFJ銀行
つまり、個人事業主になると、会社員時代のように「会社が守ってくれる社会保険」には頼れなくなります。そのため、どの公的保険に加入し、どんな補完制度を利用するかを自分で判断・選択することが必要になるのです。
個人事業主が加入する公的保険の種類

会社員を辞めて個人事業主になると、これまで会社を通じて加入していた社会保険から外れるため、自分自身で公的保険に加入しなければなりません。ここでは、個人事業主にとって必須となる3つの公的保険について解説します。
国民健康保険
国民健康保険は、病気やケガをした際にかかる医療費の自己負担を軽減してくれる制度です。
日本は「国民皆保険制度」を採用しており、すべての人がいずれかの医療保険に加入する義務があります。
- 加入先:お住まいの市区町村の役所で手続き
- 保険料:前年の所得、世帯人数、年齢によって計算される
- 自己負担割合:原則3割(小学生未満や70歳以上は負担割合が変わる場合あり)
会社員時代の健康保険と比べると、保険料をすべて自己負担する必要があるため「思ったより高い」と感じる方も多いですが、医療費が高額になった場合には「高額療養費制度」が使えるなど、安心して生活できる仕組みが整っています。
国民年金
国民年金は、すべての20歳以上60歳未満の国民が加入する基礎年金制度です。
会社員時代に厚生年金へ加入していた人も、独立した後は国民年金に切り替える必要があります。
- 保険料:毎年国が定める定額制(令和7年度は月額17,510円)
- 受け取れる年金:
- 老後の「老齢基礎年金」
- 障害が残ったときの「障害基礎年金」
- 本人が亡くなった場合の「遺族基礎年金」
厚生年金と比べると将来受け取れる額は少なくなるため、多くの個人事業主は 付加年金(+月額400円で将来上乗せが可能) や 国民年金基金、小規模企業共済、iDeCo(個人型確定拠出年金) などを併用して老後資金を準備しています。
小規模企業共済とは | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
介護保険
介護保険は、要介護や要支援状態になったときに介護サービスを安く利用できる制度です。
- 加入開始年齢:40歳から自動的に加入義務
- 保険料:国民健康保険料と一緒に納付
- 対象サービス:在宅介護、デイサービス、施設利用など
若いうちは意識しづらい保険ですが、40歳を超えた段階で確実に負担が始まります。将来的な生活設計を考えるうえで、国民健康保険とセットで理解しておくことが大切です。
介護保険料は40歳からいくら払う?年金や所得ごとの納付額、支払い方法を解説|みんなの介護
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個人事業主の医療保険、4つの加入方法

個人事業主が加入できる公的医療保険には、大きく分けて4つの選択肢があります。
どの制度を選ぶかによって、負担額や保障内容、そして家族の扱いも変わってくるため、自分や家族のライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
① 家族の扶養に入る
配偶者や親族が会社員などで社会保険に加入している場合は、自身の年間収入が130万円未満(条件によっては106万円未満)であれば、その扶養に入ることができます。
扶養に入る最大のメリットは、保険料を自分で払う必要がない点です。収入が少ないうちは生活の安定にもつながります。ただし収入が増えて条件を超えると扶養から外れるため、急に自分で国民健康保険に切り替える必要が出てきます。そのため、将来的な収入見込みも踏まえて検討するとよいでしょう。
【2025年最新版】106万円・130万円の壁とは?扶養内パートが損しないための働き方を税理士が解説 | 西宮のクラウド会計サービスに精通した税理士事務所「なかがわまみ税理士事務所」
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② 国民健康保険に加入する
最も一般的で、多くの個人事業主が選ぶ方法です。退職日の翌日から14日以内に住んでいる市区町村役場で手続きを行います。
国民健康保険の保険料は、前年の所得や世帯人数によって決まるため、所得が高いと保険料も高額になりやすいという特徴があります。一方で、所得が少ない場合や子どもが多い世帯などでは減免措置が受けられることもあります。
医療機関での自己負担割合は会社員と同じ3割(70歳以上は1〜2割)なので、保障面で大きな差はありません。多くの人にとってベースとなる選択肢です。
国民健康保険に入るとき、やめるときは14日以内に届出ましょう | 広陵町
③ 健康保険組合を任意継続する
退職前に加入していた健康保険を、退職後も最長2年間だけ継続できる制度です。
手続きは退職日の翌日から20日以内に行う必要があり、締切が非常に短い点に注意が必要です。
デメリットは、会社員時代に会社が負担していた保険料(通常は半分)がなくなるため、保険料が一気に約2倍に跳ね上がることです。
ただし、所得が高い場合や扶養家族が多い場合は、国民健康保険よりも安くなるケースがあります。
また、医療保障の内容は退職前と同じなので、安心感を重視したい人には適した選択肢です。
任意継続の加入条件について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会
④ 各団体の国民健康保険組合(国保組合)に加入する
特定の業種ごとに存在する「国保組合」に加入できる場合もあります。
たとえば、建設業、美容業、文芸、美術などの団体がこれにあたります。
国保組合の特徴は、所得に関係なく保険料が一律の場合が多いことです。
そのため、所得が高い個人事業主にとっては、通常の国民健康保険より保険料を抑えられる可能性があります。
さらに、組合によっては独自の付加給付(医療費の自己負担分をさらに補填してくれる制度)がある場合もあり、手厚い保障が魅力です。
ただし、加入できるのはあくまで対象業種の個人事業主に限られるため、自分がその条件に当てはまるかを事前に確認しておく必要があります。
「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の違いが分かりません。どちらが良くて、どう選べばよいのでしょうか?フリーランス3年目の私にとって、どちらがよいでしょうか?|ファイナンシャルフィールド|その他保険
個人事業主の社会保険に関するQ&A
国保や国民年金に「扶養」の仕組みはある?
ありません。
会社員の社会保険では、配偶者や子どもを「扶養家族」として登録すれば、自分の保険料だけで家族も保障を受けられました。しかし、国民年金や国民健康保険には扶養制度がないため、家族一人ひとりが加入者となり、それぞれ保険料を負担する仕組みです。
そのため、子どもが成人したり、配偶者が専業主婦(夫)であっても、加入人数が増えればその分保険料も高くなる点に注意が必要です。
支払った保険料は経費になる?
自分や家族の国民年金や国保の保険料は「事業の経費」にはできません。
ただし安心してください。「社会保険料控除」として、確定申告時に所得から全額を控除できます。結果的に、所得税や住民税の負担を軽くする効果があります。
つまり、経費ではないものの、税金面ではしっかり優遇されているのです。毎年の確定申告で、支払った領収書や納付書を必ず控えておきましょう。
従業員を雇った場合の社会保険料は経費になる?
従業員を常時5人以上雇った場合、その事業所は社会保険の適用事業所となり、健康保険と厚生年金への加入が義務化されます。このとき、保険料の半額は事業主負担となりますが、この負担分は「事業経費」として計上可能です。
つまり、人件費と同じように事業コストとして扱えるため、雇用拡大による社会保険料の負担は、税務上ある程度カバーできる仕組みになっています。
国民健康保険の保険料はどのように決まる?
前年の所得や世帯の加入者数によって決まります。前年に大きな収入があった場合、翌年の保険料が高くなる点に注意が必要です。
国民年金を未納にしたらどうなる?
将来受け取れる年金額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金の受給資格を失う可能性があります。経済的に厳しい場合は、免除・猶予制度を申請しましょう。認められれば、将来の年金額は減るものの、未納よりは大幅に有利です。
社会保険料を安くする方法はある?
国保組合に加入すると、所得に関係なく定額の保険料になる場合があります。所得が高い人ほど負担を抑えられることも。また、付加年金(月額400円プラスで将来受け取れる年金額が増える制度)を利用して、コスパ良く老後資金を増やす方法もあります。
まとめ
個人事業主は、会社員とは異なる社会保険制度に自身で加入する必要があります。基本は「国民健康保険」と「国民年金」ですが、任意継続や国保組合といった選択肢もあり、ご自身の収入や家族構成によって有利になる方法は異なります。
また、退職直後は国保や任意継続の手続き期限が短いため、「知らなかった」では済まされない状況になることも少なくありません。事前にしっかりと情報を集め、計画的に行動することが大切です。
そして、社会保険の仕組みを「一人で全部調べて対応する」のは意外と大変です。
初東互助会では、個人事業主でも安心して加入できる独自の社会保険制度やサポートを用意しています。通常は会社員しか利用できない仕組みをカバーできるため、「保険の不安を減らして仕事に専念したい」という方におすすめです。
この記事が、あなたの新しい一歩を後押しし、安心して独立・開業できる助けとなれば幸いです。
